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   Researcher

  ■ 上田 裕紀
 
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   Medicine project / 先端生命医学研究者育成プロジェクト −大学院医学系研究科−
Name    上田 裕紀 (医学系研究科・分子内分泌学)
Theme    『 1型糖尿病発症機構の解明 』
Index    1. 1型糖尿病発症原因遺伝子の解析
 2. 免疫シナプス機能不全症候群の概念確立を目指して
 3. 免疫シナプスを利用した新規治療法の設計
 
  9x9  Research contents



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1.  1型糖尿病発症原因遺伝子の解析

fig1    1型糖尿病は米国だけで年間約13,000人もの幼児・小児・若年成人に新規発症し、喘息に次いで二番目に若年患者数が多い慢性疾患であります。発症頻度が低いとされる我が国でも全糖尿病患者の約5%、30万人以上の患者が存在し、コントロールが困難なことからQOL・寿命の両面において予後不良な疾患であります。移植医療では終生にわたる免疫抑制が不可欠であり、再生医療に関しても自己免疫の再発による再生膵β細胞の破壊を免れないことから、自己免疫機序の解明ならびにそのコントロールなくして再生医療の臨床応用は不可能と考えられます。

   免疫の中枢的な役割を果たすTリンパ球は、異物である細菌やウイルスを検出・攻撃し我々の体から排除する一方で、自己の細胞や抗原は攻撃しない(自己免疫寛容)が成立しています。この自己免疫寛容は、複雑かつ精巧に制御されている生体システムで、1型糖尿病は、この自己免疫寛容が破綻し、インスリンを唯一体内で産生し分泌する自己膵β細胞をTリンパ球が攻撃し破壊してしまうことにより発症します。

   Tリンパ球は、抗原特異的なT細胞受容体(TCR)を介して、抗原提示細胞上(APC)の、主要組織適合抗原(MHC)と抗原ペプチドからなる複合体を検知し反応を開始します。この時に、Tリンパ球と抗原提示細胞の間に、免疫シナプスと呼ばれる構造が形成されます。1型糖尿病発症原因遺伝子と抗原提示細胞およびCD4陽性ヘルパーTリンパ球の関係をします。そこで、我々が同定したTリンパ球制御遺伝子cytotoxic T lymphocyte antigen-4 (CTLA4)遺伝子の機能的DNA多型を中心に、Tリンパ球制御の観点から1型糖尿病発症機構を解明していきます。詳しくは拙著(文献7)を参照してください。(図1)

 

2. 免疫シナプス機能不全症候群の概念確立を目指して

fig2    1型糖尿病、自己免疫性甲状腺疾患(グレイブス病・橋本病)、慢性関節リウマチ、慢性腸炎症性疾患などの異なる自己免疫疾患は同一家系に集積する傾向があること、つまり共通した遺伝素因があることが知られています。CD4陽性ヘルパーT細胞は免疫システムの指揮官としての役割を担っています。現在のところ、ヘルパーT細胞には4種類のサブセットがあることが知られています。免疫シナプスは、これらのCD4陽性ヘルパーT細胞の分化誘導の役割も担っています。そこで、免疫シナプス機能不全という観点から、自己免疫疾患の共通素因を明らかにしていきます。 (図2)





3. 免疫シナプスを利用した新規治療法の設計
 

fig3   私が3年あまり所属していた英国ケンブリッジ大学の研究所グループ(http://www-gene.cimr.cam.ac.uk/todd/)が中心となって、DNAチップを使用した「網羅的全ゲノム関連解析(Genome-wide association studies: GWAS)」からヒト1型糖尿病疾患感受性遺伝子が続々と同定されつつあります。これらの多くの遺伝子は、他の自己免疫疾患とも関連することが報告されています。そしてその多くは、免疫シナプスの形成・制御に関与しています。そこで、免疫シナプスと自己免疫疾患共通遺伝子との関係を解析します。 これらの研究から、免疫シナプスを制御する方法を見出します。 そして、免疫シナプスの制御を低分子化合物で可能にし、経口剤で自己免疫疾患を予防・加療する斬新な方法を設計してゆきたいと思っています。(図3)




本研究室の大阪大学大学院医学系研究科・医学部ホームページでの教育研究活動紹介
大学院生向け研究概要(pdf)

 

 
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