タンパク質が機能を発揮するためには、特定の立体構造を形成しなけれ
ばなりません。しかも、条件さえ整えば自発的に構造形成が起こるた
め、立体構造はアミノ酸配列が決まれば、あらかじめ定められていると
考えられています。しかしながら、アミノ酸配列から、立体構造や機能
を予測することは完全には出来ておらず、約50年前に問題提起されて
以来、未解決の問題です。タンパク質が自発的に天然な構造を形成する
ということを物理化学の言葉で言い表すと、「系の自由エネルギーが最
小になる様に天然構造が形成される」ということになります。我々の研
究グループでは、溶媒である水のエントロピーに着目することで系の自
由エネルギー関数の定式化を行い、それに基づき立体構造予測法の開発
を進めています。成功すれば、機能や物性を自由にデザインしたタンパ
ク質の合成も夢ではありません。
2. 創薬を目指したタンパク質―リガンド結合機構の解明 |
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基質結合タンパク質は特定の低分子と結合して化学反応を触媒すること
が解っています。低分子、高分子を含め、生体内には莫大な数の物質が
存在するにもかかわらず、極めて高い選択性を持ってタンパク質は相手
分子を認識します。化学的な立場からすると、反応選択性は化学反応に
おける活性化ポテンシャルと分子の立体因子の影響によって生じるとさ
れています。同様に反応場を提供するタンパク質が基質分子と立体構造
的に“馴染む”ことが、基質特異性には必要だと考えられています。し
かし、この“馴染む”メカニズムには未だ不明な点が多く、統一した見
解は得られていません。我々のグループでは、分子シミュレーションな
どの従来法に加え、熱力学的観点からのアプローチを試み、基質結合メ
カニズムの解析を行っています。
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